業界用語や社内用語は世間の常識?

木村情報技術株式会社AI事業部製薬営業部の伊藤です。
私は2013年に製薬企業から弊社に転職しました。前職ではMR(医薬情報担当者)として26年間勤務しておりました。
MRの業務は、医療機関や保険薬局で医療用医薬品の適正使用情報を伝達し、安全性情報を収集するのが主な目的です。ただし、私を含めてベテランの社員にはITに疎い人が多い職種でもあります。
さて、そんなアナログおじさんの私がIT企業に転職したので、当然のごとくIT用語がわからずに苦労しました。業界用語、社内用語、言い回しに対して意味を取り違えてしまったことや、お客様に伝わらなかったことは数多くあります。
その反省から気をつけていること、組織メンバーに共有していることについて書きます。「そんなことも知らないのか!」とお叱りを受けそうですが、しばらくお付き合いください。
私が意味を取り違えてしまい恥ずかしかった言葉(どう恥ずかしかったかは内緒)
デフォルト
「初期設定」や「標準装備」という意味で使われる方が多いと思います。新聞では「債務不履行」の意味で使われることが多いですよね。
インバウンド、アウトバウンド
「日本への旅行者」や「海外への旅行者」として定着しておりますが、ビジネスシーンにおいては「サイトへのアクセス」「問い合わせ」や「宣伝広告」として使われます。
予算
「費用の計画」という意味で使われることがほとんどですが、「営業の売上計画」という意味で使われることもあるようです。
プロトコル
Wikipediaでは、「複数の者が対象となる事項を確実に実行するための手順について定めたもの」
*となっております。IT企業では「通信プロトコル」のことを指すことがほとんどですが、製薬業界でプロトコル(プロトコール)といえば、「治験実施計画」のことを指します。
*出典元:プロトコル - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%88%E3%82%B3%E3%83%AB
ASAP
製薬企業のお客様との打ち合わせの時に出た言葉です。某製薬企業の略称かと思いましたが、「As soon as possible(できるだけ早く)」だったのですね。
ジャストアイデア
Google翻訳では「ただのアイデア」。私は「まさにナイスなアイデア」だと思ってしまい...。
社内では通用するが、お客様には伝わらなかった言葉
QA(キューエー)
弊社が提供するAIお問い合わせシステムを提案している時に、Q&Aのことを「QA(キューエー)」と言ってしまったために、『QAとはクオリティ何の略ですか?』と質問されてしまいました。
拡張
MRであれば、「血管拡張」「気管支拡張」という言葉が浮かぶと思いますが、IT業界では「機能追加」という意味合いが強いです。
しかし、弊社のAIお問い合わせシステムでは別の意味で「拡張」という言葉を使うので、そのままお客様に話しても理解されませんよね。
フィードバック、チューニング
「QA」や「拡張」同様にAIお問い合わせシステムで使用するそれぞれ違う意味の言葉なのですが、話す本人が同じ意味で使うものですから当然お客様は混乱します。
人総経(ジンソウケイ)
弊社内では「人事総務経理」の略ですが、口頭で「ジンソウケイ」と言ってもお客様は何のことやらさっぱりわかりません。
社内用語ではないが、お客様に伝わらなかった言葉
冗長化
機器や回線を増やしてリスクを回避する意味でリダンダンシーとも言われますが、「冗長」が長くて無駄だという意味のため、お客様に勘違いされてしまいました。
タブレット
さすがに錠剤(tablet)と間違えられたわけではないですが、iPadと言い直したら伝わりました。
データをはき出す
「データを出力する」という意味ですが、聞き返されました。
自分の評価を下げかねない言葉
次に、お客様に対して失礼に当たる文章や文言、自分の評価を下げかねない言葉の例も挙げます。
お客様に対して失礼な言葉
- させていただく→いたします、します
- ご存知の通り→ご存知じゃないかも
- なるほど→わかりました
- 迅速に対応いただきまして→早々にお返事いただきまして
- 正直ベースで→お客様が言うのはOKです。むしろ言ってほしい
日本語として間違っている言葉
- とんでもございません
- よろしかったでしょうか
- 助詞なし言葉(ex.現状、お聞きしたところによると...)
読み仮名が間違っている言葉
- 代替(だいたい)
- 重複(ちょうふく)
- 早急(さっきゅう)
- 御用達(ごようたし)
- 他人事(ひとごと)
既に市民権を得られているけど、お客様に言わないほうがいい言葉
- ~的な
- ~の形で
- ほぼほぼ
- いまいま
- コミットする、等々
まとめ

私は組織メンバーのお客様に対する提案や社内プレゼンを聞いてよく指摘しますが、実は自分の過去の失敗経験によるものがほとんどです。
これは弊社だけの問題ではなく、お客様やパートナー企業にも、難解な言葉を多用する方は多くいらっしゃいます。『この人達は横文字ばかり多用して、もしかしたら私を試しているのだろうか?』と考えたこともありました。
話し言葉では全く違和感がなくてもメールにするとおかしな文章や、逆に、メールでは問題ないけど発話すると変な言葉もあります。ですが、優秀な検索エンジンは読みがなを誤入力しても正しく変換するので、気づかないことも多くあると思います。
『業界用語を使ったらダメ!』『正しい日本語を使わないと絶対ダメ!』というつもりはありません。言葉は生き物ですので、上記の言葉もそのうちスタンダードになるのかもしれません。
ただし、お客様だけでなく社内や家族、世の中の全てに対して、できるだけわかりやすい言葉でコミュニケーションをとることが大切だと考えおります。